稲城南山とその周辺

多摩丘陵編



長沼公園(2)・・・多摩丘陵北西部の山の地質

 長沼公園の山は独自の特長と共に、多摩丘陵北西部の山の特長を持っています。
メインルートには長沼山の地質の解説板がたてられています。
メインルートをたどりながら地質を見てみましょう。


長沼公園再訪

 前回長沼公園に行ったとき、ある地学のガイドブックを持っていきました。その本に写真入りで紹介されている長沼公園の展望台の南側にある大きな崖で地層の様子を見たかったからです。しかし、野猿街道側から展望台裏の崖に迫れる道を上がっては下がり、上がっては下がりと調べたのですが、その崖が見つかりません。それらしい場所にあったのは斜面が土で被覆されている工事現場でした。
 ひとやま丸ごと保存されている長沼公園。都立の自然公園です。その山の成り立ちを示す地質の案内があっても良いのにと思っていました。
 今回、もっと長沼山を見てようと思ってメインルートに入り、偶然、地質の解説板があることを知りました。
途中でデジタルカメラの電池が切れたため、日を改めて再度長沼山に入って地質の様子を観察し、山の地形について考えてみました。


長沼公園のメインルート、霧降の道

長沼公園入り口

 長沼公園の入り口です。右側の小沢に入っていくのが前回取ったルート。
左側の石畳の敷かれた道がメインルートの霧降の道。前回、小沢の対岸に大きな崖があり、その手前を霧降の道らしいのが通っているのを見ていました。その崖を間近に見たいという思いもあって今回はメインルートに入りました。

霧降の道

 霧降の道は石畳の続くなだらかな散歩道です。この石畳は山頂まで続いています。

霧降の崖

 前回、左下の小沢の対岸から眺めた崖がここです。ベンチと案内板があります。
この案内板が、じつは長沼公園の山の地質の解説板でした。


長沼公園の地質

長沼公園の地質

 長沼公園の山の地質断面図です。下から2/3ぐらいが上総層群の地層。河口や海底で堆積した地層です。その上に御殿峠礫層。川で運ばれてきた砂利や石の層です。一番上が関東ローム層。富士山などの火山灰が積もった層です。

長沼公園の地質

 それぞれの地層がどこで見られるか解説しています。この看板のある崖の辺りは上総層群の中の平山砂層。生痕化石や印象化石も見られるようです。生痕化石とは、貝の掘った穴のあとや虫などがはいずり回ったあとの状態。印象化石とは生物の表面の形などが岩に残ったものをいいます。

砂層

 解説板の正面にある崖を触ってみると確かに砂です。この写真の中央には貝のようなものも見えます。これが印象化石でしょうか。

休憩所

 霧降の道の中程にある休憩所です。
右側には長沼公園にいるけものの解説板。


歴層

 石畳の道をさらに登っていくと、左側に礫の層が出てきました。平山砂層の上にある礫層。大きな礫が入っています。

れき層

 少し登ると礫もやや小さいのが多くなります。



御殿峠礫層


印象的な木の根  

 コース右手のむき出した木の根が印象的です。この付近でコースの両側に礫層が見られました。
今度は充分厚さのある礫層です。御殿峠礫層です。

御殿峠礫層  御殿峠礫層  

御殿峠礫層。下には斜面から崩れた小石が溜まっていました。



関東ローム

関東ローム

 
山頂間近で関東ロームが見られます。

関東ローム

 山頂付近を通る野猿峠ハイキングコースのへりで見られる関東ローム。


中谷戸の崖と地質

 栃本尾根や長泉寺尾根はやせた尾根です。尾根はやせていても山道はしっかりとしていて不安なところはありません。これらの尾根道を下ると中谷戸の小沢に出ます。沢の横には数カ所泥岩でできたような崖があります。霧降の道にあった地質の看板によればこの崖も平山砂層でできており、生痕化石も見られる所です。

生痕化石

 生痕化石


小沢の水際は泥岩の層

 看板の地質解説にはありませんでしたが、ここの小沢の水際は数層が重なった泥岩の層でした。

泥岩

 水際は黄土色で上の方は黒っぽい層です。この黒っぽい層の上の方は生痕化石などがあるよく固まった平山砂層です。

泥岩

 中谷戸に合流するこぶし沢でも黄土色の泥岩が流れの底に見られました。この写真は小沢の流れを見下ろして撮ったものです。
沢底の黄土色の泥岩は水の浸食のためにしわになっています。

泥岩の下刻

 黄土色の泥岩のあった場所の少し上流では黒っぽい泥岩の層がまさに水の流れで窪み込んでいる場所もあります。
こうやって小さな流れの沢が下へ下へ、そして少しずつ両脇へと浸食しているのです。

 山の砂層を通り抜けた水はこのような泥岩の層にぶつかって、その層の上を流れ、地表に出て沢となったのではないでしょうか。泥岩よりも砂層の方が速く浸食されるので、深い谷戸とやせた尾根ができていったのではないでしょうか。


長沼山の地質の特長

 長沼山の地形は深く入り込んだ幾筋もの谷戸と、その谷戸に囲まれたやせた急峻な尾根が特徴的でした。
谷戸には水が流れており、コケの付いた崖がいくつかありました。

 これらの崖はおもに砂層でできていました。平山砂層です。柿の木沢の横と霧降の道の横に2段になって崖があったことを考えると、平山砂層はずいぶん分厚い砂層です。地質断面図では平山砂層の厚さは約60メートルになっています。
 長沼山に降った雨は、この分厚い平山砂層にしみ込み、その下部の泥岩状のところで横方向にしみ出して谷戸の流れになるのでしょう。深い谷戸と急峻な尾根はこの地質の特長を反映しているのではないでしょうか。

 ところで、長沼山には平山砂層などの上総層群の地層の上に、河原の石のような御殿峠礫層が乗っています。
御殿峠礫層の礫は、まだ多摩丘陵も多摩川もなく、関東平野が海だった頃、丹沢山塊や関東山地の方から東側に流れていた当時の川によって運ばれ、河原に堆積した礫だといわれています。

 上総層群の上に御殿峠礫層が乗っているのは、そしてその上に関東ロームがあるのは、多摩丘陵の北西部の特長です。この特長は、多摩川を隔てて府中の浅間山でも見られます。

 稲城南山では上総層群の地層(稲城砂層)の上には御殿峠礫層はなく、直接関東ロームが乗っています。稲城南山の崖は多摩丘陵の中央部の特長を分かりやすく見せている場所です。
(写真撮影 2006年9月)






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